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音楽

「冬のソナタ」DVD販売延期

 

同大ヒット韓国ドラマ「冬のソナタ」のオリジナル版DVD発売を予定していたソニー・ピクチャーズエンタテインメントが、同ドラマの劇中で使われている楽曲の権利処理が不十分という理由で、DVD販売を延期し、さらに全国紙面において「権利者をさがしています」という異例の呼びかけを行った。

 


http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20100326/enn1003261635017-n2.htm

同ドラマで使われた楽曲の権利関係については、楽曲の著作権の信託譲渡を受けたと主張するアジア著作協会(JASRAC等と同じ著作権等管理事業者)が、第一興商に対して著作権使用料相当額を請求する内容の訴訟を提起しており、今年2月10日に第一審(東京地裁)の判決が出た。
東京地裁判決では、アジア著作協会が権利を保有していることを認めた楽曲もあるが、多くの楽曲において、同協会の権利保有を否定した。

東京地裁がアジア著作協会の権利を否定した理由は楽曲によって様々だが、共通している大きな要因は2つある。

1つは、楽曲の原権利者(作詞家、作曲家)、韓国の著作権管理会社である株式会社ザ・ミュージックアジア、日本の著作権等管理事業者であるアジア著作協会の3者間における契約関係が不明確な楽曲が多かったこと。

もう1つは、原権利者とアジア著作協会との間に入るべきミュージックアジアが、平成19年3月に会社清算により閉鎖されたこと(=大事な時に姿を消してしまったこと)、である。

ここで、そもそも「海外の楽曲に関する権利処理」がどのようになされるかを簡単に概説しよう。

海外の作詞家・作曲家等の原権利者は、まず自国の音楽出版社(著作権管理会社)に著作権を信託譲渡する。この場合の音楽出版社を、オリジナルパブリッシャー(OP)という。
日本の音楽出版社が海外楽曲の日本における使用権を得ようと考えた場合は、このOPとの間で、「サブパブリッシング契約」を締結し、自らが、OPに対するサブパブリッシャー(SP)となる。
このOPとSPの契約関係に基づき、日本の楽曲使用者は、SPに対して楽曲の使用料を支払うか、又は、SPが会員となっている著作権等管理事業者(多くの場合はJASRAC)に使用料を支払う。
これにより、楽曲使用者→JASRAC又は音楽出版社(SP)→海外の音楽出版社(OP)→原権利者へと使用料の分配がなされることになる。

さらに、諸外国にも、自国内にJASRACと同様の機能を有する団体が存在するが、その団体とJASRACが「相互管理委託契約」を締結している場合は、楽曲使用者はJASRACにさえ使用料を支払っていれば、JASRAC→海外の著作権管理団体→海外の音楽出版社→原権利者へと使用料の分配が自動的になされる。

この2つのルート(「サブパブ契約ルート」と「JASRACルート」)が、海外楽曲の著作権使用料に関する、最もポピュラーな分配ルートである。

では、「冬のソナタ」等の韓国楽曲に関しては、この2つのルートを取ることが出来なかったのだろうか?

韓国にもKOMCAというJASRACに相当する著作権管理団体が存在する。
しかしながら、このKOMCAとJASRACは2008年1月まで「相互管理委託契約」を締結していなかった。つまり、2008年1月までは、上記の2つのルートのうち、後者のルート(JASRACルート)が使えなかったのである。

そして、KOMCAがそのような状態だったため、2008年までは、韓国楽曲の日本における使用の窓口となる著作権管理団体が乱立する形となってしまっていた。
複数の管理団体が存在すること自体は悪いことではなく、現在の日本も同じ状態だが、日本の場合は、良い意味でも悪い意味でもJASRACという独占団体が存在したため、使用料の回収方法がシステム化されており、そのシステムを踏まえて、イー・ライセンス等の複数の著作権管理事業者が存在する形になっている。
しかし、韓国の場合は、そもそも(特に海外での楽曲使用に関する)「システム」自体が確立しない状態で、管理団体のみが乱立する形になってしまったため、契約関係がぐちゃぐちゃになってしまったのである。

このように、海外楽曲の日本での使用において、通常使われる分配ルートが使えない状態にあったにもかかわらず、BGMをガンガン挿入した「冬のソナタ」が日本で大ヒットを記録してしまったため、音楽の権利処理が後手後手になってしまって、今回の「DVD販売延期」という不幸な事態を招いてしまったのである。

アジア著作協会が提起した訴訟は、現在控訴中であり、未だ確定していない。このため、「冬のソナタ」の楽曲の権利関係は不明確なまま。よって、SPEとしても、販売延期の決断をせざるを得なかったのだろう。

ちなみに、今回SPEが全国紙で「権利者をさがしています」と告知したことについて、「韓国の楽曲なのに日本で告知することの意味があるのか?」という疑問を呈している人がいるようだが、実はこれは大きな意味がある。

確かに、日本で告知をしても、韓国の権利者が名乗りを挙げてくることはないかもしれないが、著作権の利用はあくまでも国ごとに考えるので、「日本国内で、権利者を探そうと思ってどんなに努力をしても、結局見つけることが出来ませんでした」というのは、少なくとも日本国内で「権利者不明」のまま楽曲を使用する理由にはなり得るのである(最終的に、今年1月に改正されたばかりの著作権法上の文化庁長官による裁定制度を利用することを想定しているのかもしれない。)。

どこまでのことをすれば「努力をした」ことになるのか?の基準はないが、主要全国紙での呼びかけ、というのは、かかる「努力」のうちの大きな要素になるだろう。

投稿者 E&R | PermaLink | コメント(0) | トラックバック(0)
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